“なんでオンナは化粧するか知ってる?”
“なんでオンナは化粧するか知ってる?”
女は言った。
“オトコは解釈したがるからよ。人は他人に本質を規定されて自分を矮小化されるのが一番イヤなの。”
それはたしかにそうだ。男は思った。女は続けた。
“でも、いくら言っても止められないの。だから化粧なんてして本質から目を逸らさせるの。しかたがないから外見を解釈させるのよ”
男はそれを聞いて暫く考えているようだった。そして徐ろに呟いた。
「解釈しない、なんてことが可能なのかなぁ」
女はすぐにそれに答えた。
“今はまだ無理、だと思う。そして、それを言葉で説明することは、私にはできない。どうしても知りたいなら…”
そう言いながら枕元に置いた鞄から、小さな箱を取り出した。
“知りたいなら…私はただ受け容れることならできるわ。解釈なんて不粋なことはしない。ただ受け容れるだけ。それ、見てみたい?”
0.02mm。そこまで近づかないと見えないことが世界にはある。そしてそこは目では見えない本質が剥き出しになった世界。
男は言った。
「見てしっかり学べ、ってことか」
女は言った。
“ほら。また解釈しようとしてる”
0.02mm。解釈の不要な世界の、門番が検札するチケット。
ロマンチックシモネタ。